夢のあとに(11)パリ15区、16区、17区 パレふたつ

 15区は市の南西、広さ最大です。東隅は14区モンパルナスのつづきで、ときに特別展のあるモンパルナス美術館(もと共同アトリエ)、シャルトルへの始発駅モンパルナス駅があります。南隅のジョルジュ・ブラッサンス公園はシラク市長の政策で造成1977、改修1984されました。ブラッサンスは近くのサントス・デュモン通り42居住。芝生、花、樹木が多く遊び場もあります。公園前はCENTRE D’ANIMATION G.B.です。土日祝に公園の脇で古本市があります。区の真ん中あたりブロメ通り33には2017.3バル・ブロメ(200席)ができました。ここはベル・エポック~1950年代ミスタンゲット、ベーカー、ミロ、プレヴェール、サルトルらも見えたミュージックホールでした。
 公園の西にベル・エポックの作曲兼歌手のポール・デルメ通りがあり、その先に屋内競輪場跡の《パレ・デ・スポール》1960,4500席。J.アリディ1961座席700破壊,67,69,71,76,80,82,06,10、J.フェラ70、J.フェラとF.ルマルク72、ダリダ72,80、マキシムL.F.74、S.ヴァルタン81,82,91、F.ギャル82、L.フェレ91、J.クレール97,09,12,15、ダニー・ブリヤン97,99、M.サルドゥ04,05,07,11、D.ギシャール04、E.ミッチェル04,07,10、A.バリエール08、I.オーブレ11、アズナヴール15など壮大なショー。エッフェル塔とセーヌ川に近いパリ日本文化会館では芦野宏が第4・5回「日仏親善コンサート」を開館翌年の1998年リーヌ・ルノー、2000年ジロー、アダモを迎え開催しました。
 右岸の西16区は高級住宅街として有名でした。南のオートイユに「詩人庭園」があり、1978年と2010年に訪ねてみました。王妃マリー・アントワネットも愛唱したという<愛のよろこび>はドイツ系J.-P.マルティーニ(1741-1816)が仏人作家フロリアン(1755-94)の歌詞に作曲した歌で、伊語訳はイタリア古典歌曲です。この歌では世界最高と評する岡村喬生さんが歌うのをLPとライヴ1976.7.7で鑑賞しました。仏詩のはコラ・ヴォケールやナナ・ムスクーリを聴きます。庭園ではフロリアンやデスノス、ヴェルレーヌ、アポリネール、ボードレール、アラゴンらに逢えました。
 ブローニュの森は東のヴァンセンヌの森とともにオスマンの大改造で造成されました。バガテル公園2010.4はバラの開花まえで、長い湖のほとりを歩きました。森に近いマルモッタン美術館へはモネ「印象・日の出」が還ってからと、モリゾ「さくらんぼの木」も見るための再訪です。その帰りはアンリ・マルタン、ジョルジュ・マンデルふたつの大通り、パリいちばんのマロニエ並木です。途中で芦野宏も聴かせてくれた<お菓子と娘>の歌詞にある「ラマルチーヌの像」に遭遇。終着はトロカデロ広場、シャイヨー宮です。宮内のTNP(国立民衆劇場2500席)では、グレコ&ブラッサンス二枚看板公演が1966.9.16~10.22で30回もあり観客9~10万人を記録しました。
 17区で凱旋門の西へたどり右折するのがアカシア通りです。イヴェット・ジローが歌う<パリの花束>はこの通りを含むパリの名所10カ所を花にたとえましたが、1877年以来、通りに並木はありませんでした。区の西端<ルナ・パーク>跡の国際会議場《パレ・デ・コングレ》1974,3723席では大規模なショーも催されます。S.ヴァルタン1975,77,83,04,08、レオ・フェレ1975オケを指揮して歌も、セルジュ・ラマ1975,77~79,81,95,09、M.サルドゥ1977、G.ルノルマン1982,84、M.マチュー1986、H.サルヴァドール1986,04,05,07、アズナヴール1987,00,04,07、トレネ1989、レジアニ1997,03、クロード・ヌガロ00、P.カース00、ダニー・ブリヤン07、A.バリエール07,11、フランシス・カブレル08、J.クレール12、M.ルグラン12など。1975年には宝塚2回目の公演がありました。パレ・デ・コングレに直結するホテル・コンコルド・ラファイエット(現ハイアット・リージェンシー)では、1976年「ニナ・リッチと芦野宏ディナーショー」が催されています。
 区の北東部に<バティニョル公園>があります。クリシー広場に近いが閑静な庶民街です。そこでイヴ・デュテイユは生まれ育ちました。1988年フランス人の選ぶシャンソン・ベストで第1位が彼の<子供を抱いて>で、来日もたびたびですから邦人のファンも多いことでしょう。<バティニョル公園>は彼が子供のころ遊んだところで、そのころを回想して歌います。ナシオン広場のコンサート1963前後からロックが進入し浸透しますが、イヴ・デュテイユはバルバラやマシアス、アダモらにつづきシャンソンにロマンチズムを回帰させた歌手兼作詞作曲家です。(2019.11.18) 後藤光夫©