12区には11と4の区境にバスチーユ広場、11と20の区境にはナシオン広場があります。大革命の発端として名高いバスチーユにはミッテラン大統領のグラン・プロジェの一環で革命200周年1989に《オペラ・バスチーユ》2700席がオープン。シャンソン公演もあり、シャルル・トレネ1993.5、ジジ・ジャンメール2000.11など。ナシオンは革命時にギロチンが置かれ、オペラの題名になった詩人『アンドレア・シェニエ』ほか1306人が処刑されました。広場では2世紀ほどのち、ボリス・ヴィアンやH.サルヴァドールら先駆のあと、ポール・アンカ来演後の1963.6.22にプレスリーに憧れてロックを志したジョニー・アリディ、シルヴィ・ヴァルタン、R.アントニらの野外コンサートに15~20万の若者たちが押しかけます。「イエイエ」時代の到来です。ゲンスブール、C.フランソワ、J.バーキン、F.ギャル、F.アルディらが輩出し「フレンチ・ポップス」とよばれました。
12区にはパリ主要駅のひとつリヨン駅があり、高速鉄道TGVはリヨン方向、イタリア、スイスまでと在来線ブルゴーニュ方向ほか、メトロなどの起点です。戦前は、祖国から船で来る日本人が港町マルセイユに着いて北上しパリに着くのがその＜リヨン駅＞でした。バルバラはこんな歌をつくり、本人ではなく邦人がゼスチュアとかけ声よろしく歌うのを何回か聴いたことがあります。
今日もまたパリは雨ね／…／大好きなイタリアへ／カプリ島やヴェニスへ／Taxiリヨン駅ま
で行って／お願い…／カプリ行きの汽車に乗るの／リヨン駅まで急いでね(矢田部道一詩より)
12区のベルシー地区にはパリ最大の総合体育館《ベルシー・アリーナ》1984,20300席が20世紀末の東部再開発でワイン倉庫跡につくられました。運動競技だけでなく、国内のほか来仏大物歌手たちのコンサートやミュージカルなど多目的に使われます。J.アリディ87,90,92,95,03,05,06,10,13、J.クレール87,98、M.サルドゥ89,91,93,98,01,12、ミレーヌ・ファルメール89,96,99,00,06,13、フランス・ギャル93,94、エディ・ミッチェル94,96,97,99、セリーヌ・ディオン96,08,13、P.カース98、セルジュ・ラマ03、S.ヴァルタン05、M.ポルナレフ07、ルノー07、D.ブリヤン08、など。
イヴ・モンタン(70歳)はたぶん最後と思って4歳になる息子に見せておきたかったコンサートを、1992.5.29ここで予定しておりました。しかし、急逝91.11.9したために実現できませんでした。
地区内を見るまえに13区へのセーヌの架橋を眺めれば、1951年パリ市二千年祭記念映画『巴里の空の下セーヌは流れる』を思い起こします。ちなみに記念作曲作品はアンリ・ソーゲ『パリの風景』でした。映画ではジャン・ブルトニエールが「ベルシー橋の下に哲学者が…」と歌っています。橋から戻れば、かなり広いベルシー公園区域。まずは壁面の銘板に『ウェストサイド物語』のレナード・バーンスタイン広場。だいぶ昔ニューヨークフィルを振った『田園』に親しみました。つぎはジャン・ルノワール通り、画家ルノワールの次男、映画監督。『フレンチ・カンカン』はシャンソン・ファンならだれもが見ているでしょう。若者たちの長蛇の列はシネマテーク・フランセーズの前でした。区域をさらに進むと緑の多い庭園・公園。そしてクール・サンテミリオン、ここは残された酒蔵群にカフェ、レストランなどが軒を連ねる「ベルシー・ヴィラージュ」になりました。
12区の東、外側はヴァンセンヌの森です。北端の城塞からはいり教会堂をながめ、さらに進めば地面に据えた「パリ花公園」の大看板が見えます。たくさんの花壇、花木と遊園地などを過ぎるなか花の見事さは見とれるばかりで、美しい孔雀もいい。五月革命後のこと、国際フロラリという草花のコンクールが定期的に催されたようですが、いまはどうなのでしょう。南西へとたどれば人工岩山のある閉鎖中の動物園、異様な趣きの移民史博物館、ドーメニル湖などを通りすぎました。
＜パリに帰りて＞ トレネ詞曲（芦野宏ホテルムーリス・ディナー1983.8.26の起こし）
なつかしいパリに帰りて／あふれる胸の想い／小雨の通りも／セーヌの流れも昔のままに／
ほほえみ語りかける／ヴァンセンヌの森の奥に／わたしを迎えつつむ母のような／…パリ…
シャルル・トレネは1946年はじめての海外公演で、アメリカ、カナダなどをまわりました。34歳という若いトレネが、風景も人もみんなやさしい、… しっとりと歌っております。(2019.9.18) 後藤光夫©
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